みなさん、突然ですが、自身の将来を不安に思うことはありますか。「将来の不安」と言っても、不安の具体的な中身は人によってまちまちで、その不安を心の中でどう扱うのかも、人によって様々だと思います。
今回書く「不安」は、海外大学院を受験する過程で、私が感じたものです。
先日、私の身近なところで、「これから海外大学院に挑戦しようと思っている」ということを打ち明けてくれた人がいました。「どうやったら力になれるだろう…」と考えた結果、私が経験した不安やそれに対する向き合い方をシェアすることが、成功体験を話すのと同じくらい、もしくはそれ以上に励みになるかもしれないと思い、ここで書いてみようと思います。
英語、ほんまに話せるようになるんか…?
私が海外進学を思い立ったとき、英語力は日常生活で使えるレベルからは程遠いものでした。
自分の現在地を確かめるために受験した最初のIELTSで、スコアは5.0。コミュニケーションのツールとして使えるかどうかで言うと、日常会話がままならない、もしくはトピックによってはギリギリ可能、というレベルでしょうか。
海外進学を思い立ったときは、必要な英語力がどの程度なのかはあまり気にしていませんでした。
しかし、よくよく調べてみると、「IELTSならば Overall Score で 6.5 以上」を出願要件とする大学がほとんどでした。当時それを知ったときは、こりゃとんでもないことを選択してしまったな…と思いました。
帰国子女でもなく、高校時代に長期留学した経験があるわけでもなかったので、英語力に関して持っていたものと言えば、大学受験の勉強で培った「知っているけど使い所がわからない」知識たちです。「英語の勉強はしてきたけど、使えるレベルではない。日本国内での勉強で、果たして本当に英語でコミュニケーションが取れるようになるんだろうか…」という不安を抱えながら、勉強を始めました。
※私が海外進学を決意したのは2020年4月ごろで、ちょうど新型コロナウイルスが蔓延し始めた時期でした。なので、語学留学をしに海外に行くという選択肢は無く、日本国内でどうやって勉強しようか…と考えざるを得ませんでした。
IELTSの勉強で最初にしたのは、IELTSに関連するテキストを購入することでした。そして、なんとなくテキストの勉強を始めました。しかし、2週間ほど経ったときに「このペースと勉強方法、ほんまに大丈夫か?」と不安になりました。また、不安です。今思えば、テキストを買ってそれをこなすことで、「自分は勉強しているから大丈夫だ」と安心したかっただけなのかもしれません。
そこで、ペースと勉強方法を細かく自己評価して、コントロールしようと思い、私は動きました。まず、時間の使い方や勉強方法について、考える必要があると感じたものをリストにしました。以下、そのときのリストです。
- IELTSのスコアをいつまでに取ればいいのか
- IELTSを5.0から6.5に引き上げるためには、相場でどれくらい時間が必要なのか
- 英語学習以外(大学の授業、ゼミ、卒論、アルバイト、海外大学への出願準備、等)の時間を考慮すると、英語の勉強にどれほど時間を使えるのか
- 上記3つを考慮すると、1日どれくらい勉強が必要か
- 1日のノルマを達成できないときは、どのようにそれを補うのか
- 4技能のうち、どの技能を優先するのか
- 各技能を伸ばすためには、どのような勉強が効果的なのか
- それぞれのテキストから得られる成果は何で、それは今の自分に必要か
- それぞれのテキストをどのように使えば、効率良く勉強できるか
- テキストを勉強する以外にどのような勉強法があるのか
こうしたことを1から調べたり考え直したりして、ワードファイルでまとめて印刷し、部屋の壁にバチンと貼りました。すると不思議なことに、自分がするべき行動をかなり具体的に言葉にしたのがよかったのか、勉強を始めた当初感じていた不安は心の中から消えていきました。
ここで強調したいことは、「本当に100%自分がその日にできることに集中していれば、不安を感じる暇はないのではないか」ということです。より正確に言えば、「不安を感じても、どのように行動するのかがはっきりしていれば、不安を感じて悶々とする時間を行動する時間にすぐに変換できる」ということだと思います。
私の経験上、闇雲に取り組んでしまっているときほど、「自分は今闇雲だ」と自覚するのが難しい気がします。それを自覚するきっかけを作ってくれるのが「不安」という感覚だと思います。少しでも不安を感じたなら、自分のその感覚を尊重して、振る舞い方を変えてみるといいかもしれません。
海外院に書類提出するらしいけど、本当に合格できるのかしら…
海外進学を思い立ち、すぐに受験方法を調べました。すると「大学が指定する書類を作成して送る」というのが受験方法で、受験といえば日本でよくある「机の勉強&テスト」をイメージしていた私は、少し戸惑うと同時に、不安にもなりました。
海外の大学院出願では、履歴書や研究計画書を提出します。そこで、学部時代の経験や職歴、研究へのモチベーション等をまとめますが、内容は自由です。ということは、「大学に自分をどのようにアピールするか」を1から検討する必要があります。
つまり、自分は何に興味があり、将来何を実現したくて、どのような能力があり、どのように大学やプログラムに貢献できるのか、などを簡潔に伝える必要があるということで、こうした情報まとめる作業の必要性を最初に感じたときは、途方に暮れました。それでも、自分の過去を振り返りながら、なんとか言葉にしていきました。
しかし、こうして自分と向き合い始めてすぐに、「今自分の中にあるものだけで、果たして合格できるのか?」という不安が生まれました。というのは、確かに上記のような情報を言葉にするのは難しいですが、「教育システムが異なるであろう他国の学生なら、中学生・高校生の頃から義務教育の中でこうしたことをクラスで発表する機会があってもおかしくない」と思ったからです。
つまり、自分は今「自分のことを言葉にする大変さ」に直面しているけれど、それは他国から出願する学生にとってはそれほど大変ではなくて、海外の学生はリーダーシップやインターン、ボランティアなど、別の領域に意識を向けているかもしれない、ということです。
実際、コロナ前であれば、欧州では Summer Course というのが盛んで、学部時代の長期休暇を利用して実際に志望校を訪れ、短期で開講される大学院の授業を受講する学生が多くいるようでした。また、大学や学位のレベルによっては、正規の出願前に教授にコンタクトを取り、前もって受入許可書をもらう学生も、少なからずいるのも事実です。
こうした不安を感じてからは、色々な学習の機会を探すようになりました。「国内外のアクティブな学生たちと競争しなければいけない」という事実を受け止め、動き始めました。
まずは、自分に足りていないなと感じる能力を挙げて、それを身につけることができる学習機会を大学内外のコミュニティで探しました。以下、自分が実際に活用した学習機会です。
- NICE が企画する国際ボランティア
- 大学の単位が付与される長期インターンシップ
- 株式会社 MIRAIing が開催するリーダーシッププログラム
こうしたものに参加して、自分に足りていないなと感じていた能力を補う努力をしました。
このように、先述の英語の場合と同様に、自分がやるべきことがはっきりすると、不安は気づかないうちに消えている気がします。このケースでは、「競争率が高そうな海外大学院の入試、本当に大丈夫かな?」という不安が当初はありましたが、やるべきことがはっきりしてからは、それに集中できました。
あえて英語のケースとは違うことを強調するならば、不安はある程度必要だということです。楽観的すぎると、現実的な思考が疎かになりがちな気がします。不安に感じたら、その不安を掘り下げて、自分がコントロールできる部分に集中する原動力にするといいのかもしれません。
今回は、海外大学院進学の準備をする過程で私が感じた不安をまとめてみました。
他にも、
- いくつか受験して、合格が来なかったらどうしよう…?
- 奨学金、合格しなかったらどうしよう…?
- 周りは就職するけど、自分はまだ学生を続けるのか…
といった不安もありました。これは分量の問題で割愛しますが、どのケースであっても私が大切にしたことは「不安を感じるのは当たり前で、自分の心の中でそれを尊重しよう。そして、現実的に考えて、アクションを起こすことにつなげよう」ということです。
もちろん、これは数多くある不安に向き合う態度のうちの1つで、どの態度が正解か、という話では決してないと思います。不安の扱い方にも多様性があります。
なので、こういう考え方もあるのだな、と温かい目で見守っていただければ嬉しいですし、もし少しでも有益なことがあれば、本当に嬉しいです。