vol.3 海外大学院、出願で必要な書類
vol.3 海外大学院、出願で必要な書類

vol.3 海外大学院、出願で必要な書類

専門にしたい分野や行きたい大学が決まり、いざ出願に向けて準備を始めるとき、何から始めればいいのでしょうか。海外の大学院へ出願する場合、試験はありませんが、自分の関心や将来の目標を言語化し、さまざまな書類を作成する必要があります。自分で作成するものとは別に、大学の先生の協力が無ければ揃えることができない書類もあります。

今回は、具体的にどんな書類が必要なのかを整理しつつ、準備する上でのポイントをまとめてみたいと思います。


※必要書類は様々で、国、大学、プログラムによって異なります。私は以下の4大学に出願するつもりで準備を進めたので、欧州とオーストラリアである程度共通するものを紹介します。

  • Ghent University, International Master of Science in Rural Development (ベルギー)
  • University of Copenhagen, Agricultural Economics (デンマーク)
  • Monash University, International Development Practice (オーストラリア)
  • Wageningen University, Master’s Management, Economics and Consumer Studies (オランダ)

  1. 卒業証明書(卒業見込書)
  2. 成績証明書
  3. 語学力証明
  4. 履歴書
  5. 志望理由書
  6. 推薦書

ざっと挙げると、この6つです。ひとつずつ見ていきましょう。

1. 卒業証明書

卒業大学が発行する卒業証明書です。

卒業見込書も認めてくれる大学がほとんどで、日本の学生にとってはこれが本当に助かります。というのは、欧州やオーストラリアでは、出願の締切は大体1~3月です。日本の大学で卒業は大抵3月末ですから、正式な卒業証明書が締切までに手に入らないということが起こります。ただ、卒業見込書であれば、1学期や2学期初めに手に入り、無事出願できることになります。その意味では、日本の教育システムに配慮があると感じます。

2. 成績証明書

卒業大学が発行する成績証明書で、単位や評価、GPA等が記載されているものです。試験がない分、専門的な知識があることを、履修した授業名やGPAで証明することになります。

また、出願先の大学によっては、特定の条件が設けられます。例えば、GPAが3.0以上、数学・統計学を履修、△△学に関連する授業を12単位、等々。なので、できる限り早く条件を確認して、日本の大学で計画的に履修する必要があります。

私の場合だと、University of Copenhagenから、科目と単位数の細かい指定がありました。ミクロ経済学で12単位、マクロ経済学で8単位…といった塩梅です。そして、出願時には、該当する授業のシラバスを英訳し、日本の単位をECTS(ヨーロッパの単位)に変換するといった作業もありました。

GPAは高いに越したことはないのですが、神経質になりすぎる必要はないと思います。私自身、4年生大学で、1年次から4年時までGPAの推移は、2.8→3.2→3.8→3.7 でした。最終的に3.4ほどでしたが、無事出願した大学全てから合格通知をもらうことができました。

3. 語学力証明

英語ならIELTSやTOEFL、スペイン語ならDELEなど、語学力を証明する試験のスコアです。

留学先での使用言語が英語の場合、注意したいのは英語試験の要件です。日本で定評のあるTOEICや英検を認める大学はほとんどなく、IELTSやTOEFLが一般的です。また、スコアの要件も重要です。例えば、IELTSでよくあったのは、「Overall 6.5 で、どの技能も6.0以上」でした。大学によって異なる可能性があるので、確認必須です。

高いスコアを取るまで長期戦になりますが、一度十分なスコアを取ってしまえば、どの大学の出願にも使えます。出願の締切が集中する1~3月は、他の書類の作成に追われ、語学を勉強する時間を設けるのが難しくなってきます。また、外国語で書類を作成するには高い語学力が必要です。出願が始まる前までに、ガッとやってしまいましょう。

4. 履歴書

職歴やアルバイト経験、研究成果、課外活動等を、見やすく記載します。指定のフォーマットはないので、入れるべき情報を自分で決め、レイアウトも自分で決めることになります。

「見やすく」というのが案外深くて、私は一度履歴書を英語で書いてネイティブの友達に見てもらったのですが、そこで「ちょっと見づらい」とコメントをもらいました。自分の中では、Wordでデフォルトになっているフォントで書いて、強調したいところは文字を太くして、フォントサイズを大きくして…「見易さは大丈夫かな」と思っていたので、驚きでした。

その友達が修正する様子を見ていると、フォントからこだわっていました。見出しはこのフォントで統一、文章はこのフォントで統一、といった感じです。すると一気に見やすくなり、日本の大学で書くレポートでは意識したことがなかったので、新しい発見でした。

もし英語で履歴書を書く必要がある人がいれば、少しでも力になれればと思うので、参考程度にフォーマットを共有です。ぜひお役立てください。

5. 志望理由書

自分の強みや専門分野を学びたい理由、研究に対する熱意、将来の目標等をまとめます。これもフォーマットに特に指定はなく、内容やレイアウトを自分で考えます。志望理由書は、他の応募者と自分を差別化し、審査員に自分のことをアピールするものですので、出願の山場だと思います。

私の場合、文字数についても指定がなかったので、1000字程度を目安にして、大体A4サイズ2枚でまとまるように作成しました。参考までに、私が盛り込んだ内容を挙げてみたいと思います。もし志望理由書の作成を考えているのであれば、内容のチェック項目として活用してみてください。9つの内容について、簡潔に熱く語ることができるでしょうか

  1. 希望の研究内容
  2. その研究をしたいと思ったきっかけ
  3. その研究の社会的便益
  4. 自分の強み
  5. その強みを活用してどのようにプログラムに貢献するか
  6. プログラムを選んだ理由
  7. プログラム在籍中の学習計画
  8. 将来の目標
  9. その目標の社会的便益

具体的にどのような内容になるのか、英語でこれをどうやってまとめるのか、等々、まだまだ掘り下げる部分があるので、詳細は別の記事で紹介しようと思います。

6. 推薦書

大学の指導教員の力を借りて、出願者の人柄や能力について書いてもらうものです。

多忙な大学の指導教員にお願いをするということは、相手の生活にリスペクトを示す態度が必要です。直前になって「推薦書を書いて欲しい」とお願いをしても、なかなか聞き入れてもらえないでしょう。少なくとも、1,2ヶ月前には伝えるようにしましょう。

また、推薦する立場を想像すると、出願者の中で「進学後何をしたいのか」が具体的に決まっていない状態では、推薦の仕様がありません。推薦書の依頼をする前に、ある程度、希望の専門分野やモチベーションについて、語れる必要があります。それをわかりやすくまとめた上で、ファイルを添付のもと、お願いをしましょう。


さて、今回は、海外大学院に出願する際に必要になる書類と、それを揃えるときのポイントを書いてみました。なかなかボリュームがありますよね…。自分の考えや希望を言語化するプロセスや、それをスッと伝わる表現でまとめるプロセスを考えると、1,2ヶ月で終わるものではありません。いつまでに何を考え、いつまでに何を仕上げるのか。計画性の有無が問われると思います。この記事を通して、海外大学院への出願を考えている人を少しでもお手伝いできれば、嬉しいです。