みなさん、「海外留学」や「海外進学」という言葉に対してどんな印象を持っていますでしょうか。自分がいざ海外留学することになったら、海外留学にどんなことを期待するでしょうか。「海外留学ではこれを達成するべきだ」というような正解が存在するでしょうか。それとも、何を期待するのかは自由で、クリエイティブに自分らしく考えることが大切でしょうか。
私の場合、IMRDのコミュニティに参加するまでは、「海外留学」という言葉がどこか特別な響きを持っていて、何かとても特別で大変なことに挑むような感覚がありました。しかし、IMRDのクラスメートと話してみると、こうした感覚は普遍的ではないことに気づかされ、「海外留学」に対する自身の態度を見直す機会になりました。
今回のテーマは、「Erasmus Mundus の雰囲気」 ×「海外留学に対する態度」です。IMRDで出会ったクラスメートが、「祖国以外の国で生活し、学ぶこと」に対してどんな態度で臨んでいるのかを切り口にして、Erasmus Mundus IMRD の空気感をお伝えできればと思います。
1. 日本人が海外留学すること自体不思議、という視点
学期が始まったばかりの頃、クラスメートとよく話題になったのは「なぜこのプログラムに参加したのか」ということでした。そこで友達の1人に、「日本には沢山いい大学があるのに、なぜわざわざ海外で学ぶの」という質問をされ、とても驚かされたのを覚えています。
というのは、その友達の中では、海外に行くことそれ自体にはそれほど重きを置いておらず、教育や研究のレベルが高い環境を純粋に求めているのかもしれない、と思い、自分の態度との違いを感じたからです。「祖国の教育水準に満足できず、海外により良い学習機会を求める」というモチベーションがあることは、それまで考えたこともありませんでした。
進路の決定や奨学金の出願を通してよく考え消化してはいたものの、やはり「経験として海外に住みたい、留学したい」というざっくりとした思いもある程度ありました。しかし、上記の質問一つで、こうした感覚はどの留学生にも共通することではなく、国籍や個人によって大きく異なることに気づき、Erasmus Mundus IMRD の多様性を良い意味で痛感した瞬間の一つになりました。
2. 様々な「海外留学」に対する態度
IMRD に所属していると、上記以外にも様々なモチベーションがあることに気がつきます。欧州出身のクラスメートは、祖国を離れてベルギーで留学することは何ら特別なことではなく、大きなカルチャーショックもあまり無いとのことです。ただ、2年目に韓国へ行くフランス出身の友達が1人いて、日本人の私が欧州に特別感を求めるように、フランス人の彼女もアジアに特別感を求めていることを知り、興味深く感じました。
また、アフリカ出身のクラスメートは、アフリカでは「祖国を離れて欧州に出てくることは、自分自身や祖国にいる家族の生活を良いものにする上でとても重要だ」と考える人が多いと言っていました。実際はというと、その友達は、勉強の合間を縫ってアルバイトをして、少しでも祖国の家族へ仕送りができるよう努力していました。
欧州ならばこう、アフリカならばこう、アジアならばこう、日本ならばこう、というように一般化するつもりはありませんが、もしかしたら、海外留学に対する態度について、国や地域、大陸による傾向があるのかもしれません。
少し視点は変わりますが、2回目の修士として IMRD に参加しているクラスメートも少なくありません。1回目の修士も海外留学という形で学位を取っていて、海外生活にはすでに慣れている参加者が多くいます。そのため、「海外留学」の目的は「海外経験」というより「将来の目標達成」だ、と目的意識が非常にはっきりしている参加者が多数派で、とても刺激的な環境だなと感じます。
3. クリエイティブに意義を考えたい
こうして見てくると、「海外留学」に対する眼差しは本当に人それぞれであることがわかります。
私の場合、留学開始前に国境を跨いだ経験がそこまで多くない、海外出身の方と深く交流する機会が日本ではあまりない、学部時代に交換留学を経験したわけでも無い、こうした背景から自然と「海外院進学=特別なことで、大きな挑戦」という認識が生まれていたのかな、と思います。
ただ、個人的に今の状態はあまり好きではありません。というのは、私のこうした態度や認識は「自然に何となく」生まれてきたもので、他の選択肢を考慮した上で「自ら選んだ」ものではないからです。
「海外留学=特別なこと」という認識を持つことで、どんな良いことがあるのか、もしくはそれを修正して「海外留学=引っ越しのようなもの」という認識の方がより学業に集中できたりするのか、またはどちらの態度も大切にするのが良いのか、こうしたことを考えたことは今までありませんでした。
ただ、IMRDに参加して、色々なモチベショーンがあることを知り自分のものを相対化できたことは、とても価値のあることなのかなと思います。「海外留学」に対してどんな態度で臨んでいきたいのか、クリエイティビティを意識して考えてみたいと思っています。
さて、今回は「海外留学」に対する態度について、私のIMRDでの経験をもとに書いてみました。Erasmus Mundus IMRD の雰囲気、感じて頂けたでしょうか。
どんな態度が良い・悪い、という話では全くないと思います。ただ、自分の態度や認識を相対化して、何を大切にしたいのかを自分で選ぶ意識はとても大切だと思います。