海外大学院に出願する際、避けて通れないことのひとつが「志望理由書を書くこと」です。海外の多くの大学では、日本の入試のような試験がないため、志望理由書が合否を左右すると言っても、過言ではありません。
今回は、そんな志望理由書の書き方について、まとめてみたいと思います。
1. 作成の手順
はじめに、大まかな作成の手順を列挙してみます。
- 盛り込む内容のリストを作り、内容を整理する
- 文章の構成を決める
- とりあえず一度書いてみる
- ネイティブの先生や友人に添削をお願いする
ひとつずつ見ていきましょう。
1-1. 書くべき情報のリストを作り、内容を整理する
文章を書き始める前に、内容を整理することが多いと思いますが、もうひとつ踏み込んで、「整理すべきなのはどんな情報か」を抽象度が高いレベルで検討しましょう。書きたい内容がたくさん浮かんでいたとしても、端から全部書いていけばいいという訳ではありません。審査をする側は、「こんな情報を書いてほしい」とある程度期待をしており、それを理解して情報を選ぶ必要があります。私が作ったリストを共有しますので、参考にしてみてください。
- 希望の研究内容
- その研究がしたいと思ったきっかけ
- その研究の社会的意義
- 自分の強み
- その強みを生かしてどのようにプログラムに貢献するか
- プログラムを選んだ理由
- 入学後の学習計画
- 将来の目標
- その目標が自分にとってなぜ大切か
- その目標の社会的意義
リストを作ったら、自分の過去の経験を振り返ったり、学術的な文献を読んだりして、項目ごとに具体的な内容を整理していきましょう。内容を考える際、海外大学院専門のウェブサイトを参考にした部分もありましたが、それ以上に、就活をしている友人からの言葉がとても参考になりました。
日本での就職と海外進学、進路の方向性は全く違いますが、誰かに「私はあなた方にとって価値のある存在です」ということをアピールする点においては、通ずるものがあると思います。積極的に相談してみましょう。普段から近くで自分を見てくれている存在って、本当に心強いです。
1-2. 文章の構成を決める
内容が整理できたら、文章の構成を考えましょう。大学から文字数等について指定がない場合、最初に文字数を決めておくといいと思います。私は、1000字程度で、A4サイズ2枚に収めることを目安にしました。具体的な構成は以下です。それぞれの項目にどんな内容が当てはまるかは、後述しています。
- 研究テーマについて(250字)
- 研究能力・人間性について(250字)
- 志望理由・入学後の活動について(250字)
- 将来の目標について(250字)
読みやすく、自分の熱意が相手に伝わるのであれば、どんな構成でもいいと思います。ただ、私の個人的な意見としては、研究テーマを最初にアピールするのがいいのかなと感じます。
審査をする側は、世界中から志望理由書が集まるため、一言一句丁寧に目を通す時間はないだろう、と思います。さらに、世界から優秀な人たちがわざわざ集まるわけですから、立派な将来の目標を持っている人は結構いるだろう、とも思います。こうしたことを考えると、志望理由書の冒頭は、自分ならではの研究テーマについて触れて、審査員に「この人は、我々の研究テーマともマッチしているし、日本から新しい視点を持ち込んでくれそうだな」と思ってもらうのが大事かな、と思います。
考えすぎでしょうか(笑)
でも、拘るならとことん拘りましょう!私は、情報を提示する順番でさえも印象を変えると思います。
1-3. とりあえず一度書いてみる
文章の構成を決めたら、早速一度書いてみましょう。日本語にしてから英語に直すとなると、どこか英語らしくない文章になりがちなので、おすすめしません。整理した内容のメモを見ながら、最初から英語で挑みましょう。
ここでポイントなのは、ウェブや書籍で出てくる表現や例文は、どんどん真似していくことです。英語表現がわからず手が止まるというのは、時間が勿体ないです。ひとまず誰かの手を借りて自分を表現してみて、気になるようであれば、後で戻って修正しましょう。
1-4. ネイティブの先生や友人に添削をお願いする
ひとまず書き終えたら、ネイティブチェックをお願いしましょう。文章の滑らかさや細かいニュアンスを客観的に確認するには、やはりネイティブの先生や友人から添削してもらう必要があります。
私も、ネイティブの友人にお願いしたところ、真っ赤で返ってきました。文法的には合っている、でもこの表現は強すぎる・弱すぎるという指摘が多かったように思います。例えば、ACTIVEな表現とニュートラルな表現があるようで、志望理由書のように自分を力強くアピールするときは、どんどんACTIVEな語彙を選択していったほうが良いとのことでした。奥が深いです。
添削のあとは、また文章の練り直しです。少なくとも1度は、書き直す作業をしましょう。
2. 文章構成(例)
次は、文章構成の例として、私がどんな構成で書いたのか、またどんなことに注意して書いたのか、詳細を見ていきます。先ほど、構成の全体像はお伝えしましたが、読みやすさを考えてもう一度書いておきます。
- 研究テーマについて
- 研究能力・人間性について
- 志望理由・入学後の活動について
- 将来の目標について
ひとつずつ見ていきましょう。
2-1. 研究テーマについて
この段落の役割は、3つです。1つ目は、自分の関心がプログラムの関心とマッチしていることを示すこと。2つ目は、オリジナルな研究テーマを提示すること。3つ目は、研究に対する熱意を表現すること。具体的な内容は以下です。
- 研究テーマについて
- その研究がしたいと思ったきっかけ
- その研究の社会的意義
研究テーマについては、学士時代に経験したこと(ボランティアや学士論文テーマなど)に触れながら、どのようなことに関心があり、どのようなことを入学後明らかにしたいのかを書きました。
「研究の社会的意義」は、プログラムのホームページや卒業生の卒業論文を踏まえて書きました。応募先のプログラムがどのようなことを実現しようとしているのか、それを正確に理解した上で、自分の言葉に落とし込みました。
2-2. 研究能力・人間性について
この段落の役割は、2つです。1つ目は、自分の強みをPRすること。2つ目は、応募先プログラムに貢献する意思があることを示すこと。具体的な内容は以下です。
- 研究能力について
- 人間性について
- これらを生かして、どのようにプログラムに貢献するか
研究能力については、学士時代のゼミ活動や共同研究に触れ、データ分析やインタビュー調査をする能力があることをアピールしました。
人間性については、自分が協調性やリーダーシップを、発揮した場面を簡潔にまとめてアピールしました。
最後に、応募先プログラムをどのようにより良いものにできるのかまで言及しました。
2-3. 志望理由・入学後の活動について
この段落の役割は、2つです。1つ目は、なぜこのプログラムでなければいけないのかを語り、熱意を伝えること。2つ目は、入学後の研究活動に関する具体的なイメージを伝えることで、プログラムに対する理解を示すこと。具体的な内容は以下です。
- プログラムを選んだ理由
- プログラム在籍中の学習計画
学習計画について、例えば、大学で開講されている授業を調べて、シラバスを軽く確認し、どのような授業をなぜ履修するのかに触れました。
また、2年間の修士課程で、どのように修士論文の準備を進め、どのように課外活動(ボランティアやインターン等)に取り組むつもりなのかも言及しました。
2-4. 将来の目標について
この段落の役割は、1つです。それは、プログラムを通して身につける能力を活用して、どのように社会貢献していくのかを伝えること。具体的な内容は以下です。
- 将来の目標
- その目標が自分にとってなぜ大切か
- その目標の社会的意義
プログラムの関心を踏まえながら、オリジナリティをアピールしましょう。プログラムで身につく能力が、どのように将来の目標達成を助けてくれるのか、読み手が理解しやすいように説明しましょう。
3. 例文集
志望理由書を実際に書くとき、使えそうな表現を紹介していきます。文章構成ごとに、詳細は省き、使い回しができそうな表現だけをピックアップしてみました。太字とイタリック表記でハイライトしたところは、私のケースですので、必要に応じて変更して、参考にしていただければと思います。
導入
To Whom It May Concern,
I am privileged to apply for the XXX program, in which I am extremely interested. I am writing this letter to demonstrate my keen motivation and capability of contributing to your program.
研究テーマについて
My research interest has two perspectives. The first perspective is to focus on what kind of social system is necessary for the sustainable development in rural areas. The second focus in on how much sustainable rural areas can contribute to food security on a global, national and local scale. I began to develop these interests when I experienced a farm stay in Australia in my 10s.
These endeavours broadened my outlook on issues relating to food and agriculture, allowing me to realise that the issues are inextricably linked to governmental policies and social systems.
Therefore, I am highly motivated to be part of your program in order to contribute to the maintenance of the rural areas in Japan and the realisation of zero hunger.
研究能力・人間性について
I believe that my academic and communication skills make me a suitable applicant for your master’s program.
My academic skills include: the technique of quantitative and qualitative research which I acquired during my bachelor’s degree.
I strongly believe that these techniques will enable me to achieve a high quality of academic performance and knowledge acquisition.
志望理由・入学後の活動計画について
Common Agricultural Policy (CAP) firstly sparkled my motivation to study at European university. My bachelor’ degree provided me with some chances to learn about the policy, but I could only scratch the surface of it. Therefore, I decided I want to study not only how it creates incentives to rural development, but also how it should be evaluated based on scientific evidence.
There are a lot of courses in which I am enormously interested such as Applied Rural Economic Research Methods, Rural Developments, and Spatial Information Technologies. These units, I believe, will not only match my research interest but also provide me with wider perspectives.
For these (put your number) reasons, I am highly committed to studying at your program.
将来の目標について
My life goal is to contribute to the maintenance of global food security. This motivation comes from, not only my research interest, but also the fact that food self-sufficiency rate in Japan is under 40% while Japan has been producing a large amount of food waste. This fact personally induces a sense of guilt and gratitude towards the international society which supply 60% of Japanese food.
I would like to embody a person who makes consistent efforts to face and solve social challenges, and to inspire people who have different levels of awareness of problems.
今回は、志望理由書の書き方についてまとめてみました。
自分の関心や希望を言語化して、それを英語でわかりやすくまとめるというのは、決して簡単な作業ではないと思います。
じっくり時間を取って、自分で納得がいくものができるまで、粘ってみてください。ここの作業の質をあげることが、合格を手繰り寄せると思います。